都住研ニュース

第64号 ●トークセッション

コメンテーター
 高田光雄氏(都住研会長/京都美術工芸大学教授/京都大学名誉教授)
コーディネーター
 高木伸人氏(都住研 事務局長)

川幡

ヨリドコ大正メイキン 外観
 ヨリドコ大正メイキンは、昭和36年の建築で、中層長屋5戸が二層連なり全部で10戸で、2階にはそれぞれ階段がついている形状のもの。耐震改修を行い、1階は7区画のシェアアトリエ、2階は5戸のアトリエで、内装はDIYで作った。
 平日はそれぞれのクリエイターが物作りに勤しみ、以前は月一のみショップとして開いていたが、現在では毎週土日にもショップ営業しており、販売するようになっている。
 都市住宅学会の業績賞もいただいた。補助金はもらっていたが、大家さんも約3千700万円の自己負担をしている。補助金を得ている関係から耐震改修も行った。すぐ隣にある2棟目も改修計画を立てていて、オーナーの意向で福祉の拠点にしていこうと計画している。
 従前は10戸で家賃は各2万円程度であったが、1階は区画シェアアトリエとして区画を増やしたので、家賃は上昇しており、7年で回収できる計算。オーナーは人とまちの繋がりを大事にし、人と違うことをするのが好き、というのが今回の計画のはじめにある。
 クラウドファンディングも導入していて、そのときには「二度とやりたくない」と思ったけれども、また別の場所でも導入する。
 私は、人の役に立つ(社会性のある用途)というリノベーションなら、積極的に応援するようにしている。居住の負担を軽減するようなサポートをしたいと考えており、現在は住吉区において、外国人介護士とアクティブシニアのシェアハウスを計画している。ここも、国の事業の採択を受けて実施している。
 古い建物で確認申請書も検査済証もない中、大学の協力を得て調査をし、法適合状況報告をし、改修後は現行法に適合するようなものとする。

フロア
 とても参考になった。戦後の古い建物をリノベするのは、補助金を入れると法適合を求められるので、嫌がられるケースが多い。
 国は適合ガイドラインを出したが、余計にややこしくなった。一方京町家は既存不適格建築物であるところからのスタートなので、有利ともいえる。そのような中、よくぞ乗り越えてやってこられていると思う。
 京都でも民間がやる露天に対して保健所は許可を出しにくくなっている。公共や地域活動が絡む模擬店はやりやすいが、今回はどうであったか。。

川幡

これから改修される隣の棟
 商店街前の道は道路は、道路占有許可の不要な道路ということを大正区に確認してもらい、警察の協議は必要なかった。この点だけでも助かった。
 法適合については、今回は200平方メートル未満であったので本来であれば必要ないが、国の事務局が「200平方メートル未満でも補助金を出しているので、適合の可否を調査して、改修後に是正するように」といってきた。大阪市の建築指導課に問い合わせたところ、指導行政として、200u未満は建築主事が法適合を調査しろという範疇ではないという回答であったため、宙ぶらりんな状態になってしまった。
 そこで、大学と協力して補助金事務局に報告書をあげれば良い、となった。。

燗c会長
 川幡さんは、建築・都市計画コンサルでハードもソフトも修行を積んで来られた。さらに、住宅供給公社にも勤務し、法制度や補助金、行政の行動様式も熟知しておられる。
 大正区での一連の活動は、それらがベースとなっている。イベントのように見えるかもしれないが、他の事業とも連携して地域の価値をボトムから上げる綿密なプロセスが組み込まれている。
 ウィズコロナ、そしてアフターコロナ時代の生活環境整備に繋がる先駆的プロジェクトとして評価できる。

2020年度も「地域の空き家等の利活用等に関するモデル事業」に採択されました! ●定例会ダイジェスト
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