都住研ニュース

第60号 ●まちと共生できる“民泊”に向けて、不動産・建築事業者ができることは?

 今年6月15日に民泊新法(住宅宿泊事業法)が施行されます。京都市内では民泊についてメディアで度々取り上げられ、市民の関心も非常に高いです。施行によって、京都のまちにどんな影響があるのか、そして市民生活にどのような影響があるのか注目されています。

 民泊新法は、急速に増加する、いわゆる“民泊”について、安全面・安心面の確保が強く求められるようになっていること、そして騒音やゴミ出しマナーなど文化の違い等による近隣トラブルが多発しているため、これに対処するとともに観光客の多様化する宿泊ニーズに対応することを目的に一定のルールを定め、健全な民泊サービスの普及を図るものとして、新たに制定された法律で、平成29年6月に成立しました。
 事業者の届出は今年3月から始まっており、問合せや手続きが殺到したとメディアも報じています(京都新聞3月15日から)。

 法施行後は、“民泊”を営む場合は
1.旅館業法の許可を得る
2.国家戦略特区法(特区民泊)の認定を得る
3.住宅宿泊事業法の届出を行う(標識の設置義務)
の3パターンの中から選ぶことになります。1,3いずれについても、自治体に対して手続きを行う必要があります。

 京都市内では、既に京町家等を利用した“民泊”が既に数多く運営されており、これまでと異なる体験ができる場所としても旅行者の好評を得ています。一方で多くのトラブルがあることも事実です。大都市圏ではマンションの一室を使った違法利用が目立ち、一方京都市内では匿名性の高い人の出入りや住民の生活スタイルとのズレによるトラブルなど、民泊を取り巻く環境は地域性が色濃く出ます。
 京都市では「京都市住宅宿泊事業法の適正な運営を確保するための措置に関する条例」を定め通報・相談窓口を設置するなどのトラブルを未然に防ぐために取り組んでいます。
 しかし、違法営業は論外として、問題の根本は、地域や暮らしを取り巻く住文化を維持・継承し、住み続けられるまちであるために、“地域社会との軋轢を無くす、もしくは接点をもつ”ことが重要であることです。さらに、宿泊場所と宿泊希望者とのミスマッチを防ぐことも重要で、地域の産業との連関を構築することも、地域の持続可能性を考える上で重要なことといえるでしょう。
 建築・不動産に携わる事業者としては、適正な手続きのもとで民泊に利用できる様々な商品を提供できる機会の増加が期待されますが、地域社会への負のインパクトを抑え、さらに「まちの魅力と価値を上げる」ためにも、購入者に対して、これまで以上にまちの特徴やルールなどを伝える「窓口」としての役割を果たすことが求められます。

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