都住研ニュース

第58号 ●北京の住まい・まちづくり拝見!

今回は番外編。都住研の研修で先日訪れた、北京の歴史的建築物を活かした展開を紹介します。

北京のストック活用〜四合院と胡同の利活用〜

〜一団地認定を活用した「華り宮」〜

胡同  北京の旧城壁内には、今でも沢山の四合院(中庭を囲う住宅様式)と胡同(路地)が現存しています。四合院とは、中国北方の伝統的な民居であり、現存するものは17世紀から第二次世界大戦前にかけて作られました。戦後は政治体制の激動の余波を受けて、所有者や居住者は変わり、オリンピック時には開発により多数が解体されてきました。もちろん、現在でも暮らしの場として現役ではあるのですが、ここを宿泊施設や商業、交流施設として活用するリノベーションが活発に行われています。
 観光と居住のせめぎ合いや、高齢者や子どもの居住場所の減少問題は京都の何十倍もの激しさを感じましたが、まちの居住機能や交流機能を維持・発展させる取り組みも見られました。
 今回は、北京で活躍する日本人建築家が手がけたものを中心に、リノベーション事例を拝見してきました。いずれも、新旧の融合に配慮し、コミュニティとの共存に配慮されていた点が印象的です。
 四合院はかつては1家族(一族)が暮らすことが多かったそうですが、現在では増築が重ねられたり、小規模に区画化され、複数の世帯が暮らす雑院と呼ばれるものも少なくなくありません。限られたスペースをうまく活用していて、京都市内の路地奥の長屋の改修と多くの共通点を感じました。
 また、増築や改修を重ねていても、中庭の豊かな緑(北京市は古木を登録している)を継承する工夫があちこちで見られ、建物で囲まれた中庭でも閉塞感はありませんでした。小鳥を飼ったり、大空に飼っている鳩を飛ばしたり(鳩レースがさかん)、21世紀になっても昔ながらの庶民の暮らしの楽しみがあちこちに残っていました。
 北京都心部では、文化大革命当時の姿を大規模な資本投下により再現した町並みや、「デザインエリア」として民間の積極的なリノベーションを誘導するなどの展開もあり、政府上げて都市のアイデンティティを構築しているようにも感じられました。

四合院
中庭の豊かな緑
リノベーション

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