都住研ニュース

第58号 ●定例会ダイジェスト

 定例会では様々な講師を毎回お迎えして、各テーマの専門的なお話をお伺いしています。そしてグループごとにディスカッション・発表を行い、様々な専門性をコラボレーションする場にもなっています。
ここでは、これまでに開催した定例会のダイジェストをお伝えします。

■第63回(平成29年7月28日)

 基調講演

  高田 光雄 氏(京都美術工芸大学 教授/京都大学名誉教授)
     「京都に新築分譲マンションがもう必要ない理由」

1.居住を目的とした住宅需要の減少

高田光雄氏  皆さん既にご承知の通り、日本では人口減少が進行しており、これ以上新設住宅の供給を促進する必要はない、という議論がある。
 分譲マンションの新規供給がゼロになっても、住宅は余っていく。「要らない」と言っても、もはや数字上では大問題にはならない。
 世帯数についても増加率は鈍化しており、今後は減少していく。
 さらに「世帯」の概念が崩壊し、世帯数のみで住宅政策を考える時代は終わっている。

2.投機的需要の増加と地価の高騰

 京都市の地価公示を見ると、都心部はバブル期以来の異常な高騰を示している。居住するという観点から地価を考える必要がある。
 京都では、都心部の分譲マンションは独自の市場を作っており、マンションの平均価格は年々上昇してきたが、近年は上げ止まりになっている。これはF単価が下がっているのではなく、都心部での供給が減って郊外に広がっているためである。
 バブル期は値段が急上昇したが供給戸数は都心部ではさほど多くなく高額の取引が多かった。当時の問題は、非居住の住戸が増加したことと、賃貸化に伴う問題やコミュニティ問題が顕在化した。
 現在の問題は、建物も居住者も高齢化し、価格が値下がりしているにもかかわらず管理費や修繕積立金を変えられないことであり、住まい手が所得の低い人に変わっていくフィルタリング・ダウンの問題も生じている。

3.空き家・ストック活用の必要

 そもそも、新築マンションはストック破壊であることを認識する必要がある。歴史的景観の調和を喪失させ、生活文化の継承やコミュニティ活動にも影響を与える。一般には不動産所有者の地域との関わりや責任が継承されなくなる可能性も高い。
 これまでに町家型共同住宅の試み、祇園祭鉾町での試みなど、コミュニティに貢献する人に住んでもらおうというマンションもあるが、中古マンションの流通の問題もある。新築をコントロールすれば、中古市場の活性化に繋がるのだろうか。市場のメカニズムをもっと研究する必要がある。
 空き家の住宅利用については、高地価の中においても居住機能を重視していく必要がある。多様化する住宅ニーズに対して多様な居住の器が必要である。
 歴史都市としての特性を活かして、暮らしの文化の継承と発展につながる活用に重点を置く必要があろう。

4.区分所有の限界

 現在日本には623万戸の住宅ストックがある。区分所有法は何度も改正され、所有権の概念が薄くなってきてはいるが、法整備による対応もそろそろ限界が見られる。
 既存住宅の流通促進のためには、維持管理や改修をやりやり易くし、管理重視の方向へ日本全体を切り替えていくことが求められる。
 現状でも、高経年マンションのスラム化の可能性、管理組合役員の高齢化と担い手不足、管理組合が行う維持管理と専門知識・技能の乖離、第三者管理の議論もある中での専門家とのマッチングの難しさなど、課題は多い。
 分譲マンションは、デベロッパーも売り抜け、新規購入者も売り抜けて行き、そしてどこかの段階でトラブルが出てくる、いわばババ抜き状態であり、供給方式自体に問題がある。

5.既存不適格マンション管理支援の必要

 既存マンションの管理支援メニューとして、居住安定性確保のための条件整備や、状況に合わせて選べる管理体制整備、資産価値の正当な評価、そして管理評価の仕組みの確立などがあるが、これらが十分実行されないままに新築マンションが供給されている点が問題である。
 今後はもっと徹底したストック重視施策や事業にシフトしていくべきである。既存マンションの維持管理、リノベーション、流通(建替)促進が必要。地域まちづくりへの参加促進も必要である。
 京都においては、住宅形式に関わらず、京都らしい住まい方を実践できるようにすることも重要。住宅だけではなく「まち」に住むということが大事。必ずしも新規供給を前提しない、ストック・まちづくり重視の住まいが必要だと言い切ってよい。

パネルディスカッション

パネリスト
    高田 光雄 氏(京都美術工芸大学 教授/京都大学名誉教授)
    井上 誠二 氏(建都住宅販売(株) 代表取締役)
    辻本 尚子 氏(みやこ不動産鑑定所 不動産鑑定士・税理士)
    魚谷 繁礼 氏(魚谷繁礼建築研究所 建築士)
コーディネーター
    高木 伸人 氏(都住研事務局長)

パネリスト1 辻本
 私はマンションのチラシの収集を趣味としているが、近年のチラシをもってきたのでご覧いただきたい。
 何とも皮肉なのが、マンションは町家を潰して建てられることが多いのに「町家に住む」というキャッチで広告を打っている。
 これらのマンションは売れているのか。広告を見る限りでは必ずしもそうとはいえない。「完成お披露目」と、既に完成しているのに広告を出している。また「実物住居」をうたっているものも同様。

井上
 2015年から2016年にかけて、マンション価格は坪280万円から300万円、トップは500万円の値を付けている。
 これは土地の単価が上がっていることもあるし、建築工事原価でも坪100万円ほどかかるなど、この数年はとても高い。
 さらに最近はホテル業界の参入も進み、採算がとれるからマンションの2倍もの値を付けて買う。
 近年は中古マンションのリノベーションを手がけて、資産価値を上げることを目指している。ただし様々な障壁がある。管理規約、役員の理解、埋設配管は思わぬ費用がかかることも。
 事業サイクルも新築より短いこともあって、仲介だけよりかは儲かる。概ね60Fのリノベで600万円から800万円の費用をかける。リノベーションの内容は段差の解消、水廻りの更新、和室をなくしてLDKタイプにする。4ヶ月で回転させるのでスピーディ。
 購入層はシングルの方か高齢者。現金払いのお客さまが多いので融資で困ることはなかった。
 修学院にある物件で、35%の空き家率のところがあった。そこの1住戸をリノベしたのだが、大好評で「うちもして欲しい」という声が上がった。
 戸建てだけでなく連棟の空き家も増えてきているし、二戸まとめると利用価値も上がる。集約していくことも必要だろうし、それに対するインセンティブも有効。

魚谷
 状態や空間として良くないストックも少なくない。天井が低く、建築や景観としてストックとして好ましくないものもある。そのようなストックをリノベーションするくらいなら、新しく作った方が良いものもあるのではないか。
 まちなかを歩いていると、ホテルなのにマンションっぽいものが増えている。それはインバウンドが落ち込んだ後には水道メーターなどを付けてマンションとして使用できるものにしている。数的にはマンション建設は減っているというが、裏では増えているかもしれない。

高田
 管理組合が合理的な判断ができて、建替え決議に至る場合は、まちづくりの文脈に合致した建替えを支援すべきである。あるいは管理組合を解散する選択もある。ただし、そのためには大変なプロセスを経なければいけないし、新規分譲時に購入者はそのことを十分理解しなければいけない。

パネリスト2 辻本
 高齢化が進んで、途方に暮れている管理組合もある。これまで管理組合活動を頑張ってきた団塊の世代も高齢化している。
 高さ規制の導入により、これまでのように容積を売って建て替える手法もとれない。
 100年保つといわれてもいつかは建て替えなければいけない。それに向けての準備をしておく必要がある。
 例えば、一人暮らしの人については亡くなった後に管理組合などに寄附していただくような働きかけも必要だろうし、売却を希望される際には管理組合でそれを買い取るような積立金も必要だろう。外部コンサルに対して報酬を出してでも準備をしていく必要がある。

高木
 全国に623万戸のストックがあるが、それぞれについて所有者としての責任を果たせるのか。新築することで社会を維持するのはもうダメだというのは東京でも話されるようになっている。そろそろそんな宣言を出しても良いのではないか。
 地元からはリノベーションで利益が出せるビジネスモデルも出てきているので、管理組合もその辺りを見据える必要があるし、また全てを残す必要があるわけでもない。

高田
 京都の既存マンションにも、改修保全に値するものはある。スケルトンがきちんとしていれば、リノベーションで状態が良くなるものもある。技術的には多様な方法が用意されている。
 基本的なこととして情報非対称性を解消する対策を講じた上で、市場メカニズムを重視すべきである。消費者がものを考えて行動すれば、京都の新築分譲マンションは自ずと売れなくなってくる。投機的なものは居住目的ではないので、住宅としての価値とはまた別の話。
 「京都に住みたい」「地域と関わって暮らしたい」というニーズを満たすものは、果たして新築分譲マンションなのかどうか。これをきちんと考えれば、自ずと答えは見えてくる。

京都にはもう、分譲マンションは要らない?〜京都の住宅・不動産市場を展望して〜 ●北京の住まい・まちづくり拝見!
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