都住研ニュース
第55号 ●空家等対策の推進に関する特別措置法が全面施行
今年2月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行、5月には特定空家の判断基準や対処手続が規定され全面施行されました。これにより、関心が高まる「空家問題」はどのように変わっていくのでしょうか。
全国におよそ820万戸ある空家(2013年)。空家それぞれの状態は多様だが、中には台風等の強風で屋根や外壁が吹き飛んだり、不審火が出るなど犯罪の拠点になる恐れがあったり、動物や虫が大量に住み着くなど、近隣住民にとって“脅威”“不安の種”となっている物件も少なくない。
このような背景を受けて、自治体ごとに空き家条例など制定が進み、2014年現在で401の自治体が定めている。京都も2013年に「京都市空き家の活用、適正管理等に関する条例」が制定、翌年に施行されています。さらにこれに先駆け、地域連携型空き家流通促進事業が市内各地で進められている。
(1)倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
・不同沈下や柱の破損などで建物に1/20以上の傾斜がある場合
・腐食や蟻害などで建物の構造耐力上主要な部分の損傷がある場合
・水平力の安全性が懸念される場合
・屋根や外壁、給湯設備やバルコニーが破損により脱落・飛散する恐れのある場合
(2)著しく衛生上有害となるおそれのある状態
・浄化槽の破損や排水の流出などによる臭気の発生がある場合
・ゴミの放置や不法投棄により多数のネズミ、蝿などの発生がある場合
(3)適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
・地域で定める景観ルールに著しく適合しない場合
・屋根や外壁など大きく傷んだり汚れたまま放置されている場合
・多数の窓ガラスが割れたまま放置されている場合
・立木が建物の全面を覆うほど繁茂している場合
(4)その他周辺の生活環境の保全のため放置することが不適切な状態
・立木の枝などが近隣に散らばったり通行の邪魔になっている場合
・動物が住み着き、毛や羽、ふん尿や鳴き声が発生している場合
・多数のネズミや生え、シロアリなどが発生している場合
・施錠されていないなど建物が不適切な管理である場合
上記の持ち主に対して、修繕や撤去の指導や勧告、命令ができる。従わなかった場合には、行政が強制的に撤去し、費用を請求できる「代執行」が可能。
さらに、空き家の所有者を把握するため固定資産税の納税情報の内部利用を可能にし、家屋があれば土地にかかる固定資産税が1/6に軽減される住宅用地特例が、特定空家に指定されれば税金軽減措置の対象外となるとされている。
現在、国は中古住宅流通についても市場整備と流通環境の抜本的な改善を進め、買取再販事業のビジネスモデル支援の検討も始めている。ハウスメーカーや住宅設備メーカー、不動産会社などが中古住宅をテコ入れする商品やサービスを増やしてきているようだ。
なお、今回の特措法の対象は「建築物及びその敷地」であり、マンションの専有部分や連棟建物の部分は含んでいない。空家を利活用・流通させるよりは、安全・安心の観点からの措置に力点が置かれているようだ。