都住研ニュース

第53号 ●定例会ダイジェスト

「京都ならではのシェアハウス、あります」事例紹介

 西村直己氏((株)八清 専務取締役)
 小森勇佑氏(ExpoHouse 大家)

◆西村直己氏

八瀬システム  当社は、京町家リノベーション物件の企画・開発・販売を手がける不動産会社です。年間80件ほど手がけ、それをインターネット等で販売しています。
 シェアハウスを企画するようになった経緯は、大規模な町家がなかなか残せないことでした。改修して売却するにも、改修費もかさみ、価格も上がります。そこで、収益物件として活用できないか、となったのがきっかけでした。そのためには、ファイナンスと管理に仕組みが必要で、仕組みができれば有効活用提案も可能であると考えました。現状、京町家の区分所有はできないので、シェアハウスとしてできないか、となりました。事例を調査し、商品として利回りのスキームを付けて「京だんらん」という称号で、第一号を東福寺で実施しました。現在は6軒を運営しています。

■事例紹介

 こちらは西陣千両ヶ辻にあるシェアハウスですが、260m2の大型の町家でした。これは当社にとって初めての200m2超えでした。この頃、シェアハウスは「住宅」ではなく「寄宿舎」と見なされるようになりましたので、用途変更申請もしました。全8室で、家賃は66,500円から71,500円、共益補は9,000円となっています。入居されている方は公務員や百貨店など京都で勤める人が多くなっています。裏には、畑も設置し、キッチンが充実しているのが特徴です。水回りは、各部屋毎に洗面台を割り当てるなど朝の混雑時のストレスを減らすような工夫もしています。
西陣千両ヶ辻

千本出水  こちらは千本出水の物件で、これは長屋を活用したシェアハウスとなっています。従来、シェアハウスは玄関を入ると共用スペースのことが多いですが、ここは元々長屋という特性を利用、専用玄関扉からプライベート空間に入り、その背後に共用スペースがあります。全9室で、家賃は57,000円から72,000円となっています。

■管理システム、販売まで

 当社では、坪60万円程度をかけてしっかりと改修し、高付加価値を付けることをコンセプトとしています。知らない人同士でも安心して住めるように管理担当がいます。短期滞在では無く居住、永住的なものも視野に入れて、町内とのつきあいや交流も大事にしています。
「八清の絶対のこだわり」としては、まず「社会人のみ」ということです。そして「京町家でしか創らない」、「コンセプトがあること」、「共用部分を重視する(50%超)」です。通常、部屋数が多い方が儲かると思われるかもしれません。しかしシェアハウスはそうではなく、共用部分が大事なのです。投資物件として5〜6%の利回りを確保するようにしています。

◆小森勇佑氏

■シェアハウスの運営

 シェアハウスを運営するようになったきっかけは、父が経営する建設会社の事務所の2階をそれをゲストハウス(宿泊)として活用できないかと考えたことです。しかし2006年当時はバリアフリー法などで旅館業の取得が困難で、その時は断念したのですが、ゲストハウスなどを色々調べている中で、東京の事例などを調べて「これなら出来るか」と、ボロボロの物件を千本上立売で取得しました。折込チラシで見つけて購入したのですが、500万円で購入。それを900万円かけて改修し、エアコンや家具家電など設備にも100万円投資しました。部屋数は5。家賃は53,000円に設置し、最大の利回りは18.4%です。概ね15〜20%の利回りが出るのであればGOサインを出しています。
 複数棟経営していますが、どれも5部屋程度の小規模なものなので、一部屋空いて家賃が5万円入ってこないだけでも、この損失は大きい。一方その部屋が埋まれば、5万円が使えますし、それを住民に還元できます。そんな考えから、茶道教室や陶芸教室、流しそうめんやハイキングなどなど、住民を対象とした様々なイベントをしています。広報活動は、毎月のこのパーティやツアー、教室などの様子をFacebookで更新しているだけです。
 007年に開業してから、今年の9月で西陣を中心に13棟66部屋を運営しています。うち2棟13部屋は立命館大学が借り上げ、11棟53部屋には29人の外国人、24人の日本人が暮らしています。
イベント他

■なぜ京都にシェアハウスではなく、ゲストハウスの開業が人気なのか

京都市内には、ゲストハウス(宿泊)の開業が多くなっています。知り合いの建築士に聞くと、彼1人で現在10件の用途変更を抱えているといいます。政府がインバウンドを押していることもあると思いますが、レバレッジによる広告効果を高くするには、規模が必要だからだと思います。1部屋に2段ベッドをたくさん置く事でたくさんの人を呼び込むことができます。

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