都住研ニュース
第52号 ●京都の住まい・まちづくり拝見!
ここでは、京都の住まい・まちづくりに関するユニークな、新しい取り組みを紹介します。
まちの防災性能を高めた、平成の京町家
〜東山八坂通〜
京都の木造文化、ひいては生活文化を象徴する京町家の伝統と知恵を受け継ぎながら、先端の環境技術を融合させた新しい京都の住宅モデルである「平成の京町家」。京都市及び平成の京町家コンソーシアムによる普及・促進策が展開されています。
この度、東山区に完成した、京都大学大学院工学研究科高田光雄研究室が計画・設計に参画され、(株)ゼロ・コーポレーションさんが手がけられた「平成の京町家 東山八坂通」を拝見してきました。
この敷地は、密集市街地の一角にあり、前面道路は二項道路です。「地球環境問題への対応とともに、自然とのつながり、まちとのつながり、住まい手とのつながりを強め、住みごたえのある住まい」を目指しているそうです。4棟8戸それぞれの特徴的なプランが展開されており、各住戸は共通して内部と外部をつなぐ「環境調整空間」を備えるともに、建物と庭が連担することでやさしい町並みや風の通り道などが確保され、従来の京町家が持っている集住の知恵を継承しています。
また、居住者が区分所有法に基づく管理組合を立ちあげ、緑地や共用スペースの管理を行い、また景観や共有地の管理に関するマネジメントルールを継承する仕組みが組み込まれています。共用空間にある緑地は、庭師の比地黒義男さんが手がけられ、繊細な季節感が演出されています。この一団地は袋路に面しているのですが、境界にある壁には避難扉が設置され、有事には蹴破って避難できるようになっていました。また、東山区独特の傾斜地であり、隣地との高低差が2m以上あり、それを支える擁壁がかなり傷んでいたところも新調し、管理組合で維持管理していくそうです。
長い年月を経てきた住宅地には、地域の防災の面からの「弱点」もあります。それを新しい一定規模以上の開発に伴い改善することが可能である点も、大きな特徴と感じました。
土間を大きくとったプラン |
裏庭は隣家と一体的 |
隣接する袋路との境界 |
共用空間の緑地 |