都住研ニュース

第52号 ●「京都市空き家の活用、適正管理等に関する条例」が施行

条例で定められたそれぞれの立場の責務と役割  平成20年度の住宅・土地統計調査によると、京都市内には約11万戸(14.1%)の空き家が存在するといわれています。これは全国平均よりもやや高い値です。また東山区で20.3%、西京区で9.8%等、地域の状況や立地により差が生じています。特に、細街路に面するなど土地利用の更新が困難なところでは、その傾向が見られるようです。
 空き家が十分に手入れされないまま放置されると、地域の生活環境や景観等に悪影響を及ぼすとともに、まちの活力の低下にも繋がり、まちづくりを進めるうえでの課題となります。このような状況を受けて条例は施行されました。

2014年4月1日、「京都市空き家の活用、適正管理等に関する条例」が施行されるとともに、これを推進するセクションとして、京都市都市計画局まち再生・創造推進室が設置されました。

 条例では、(1)空き家の発生の予防、(2)空き家の活用・流通の促進、(3)空き家の適正な管理、(4)跡地の活用、を推進するために基本理念、責務・役割を明確にしています。特に、「(2)空き家の活用・流通の促進」については、所有者の意向を把握しながら活用・流通に向けた助言や提案を行うために「地域の空き家相談員」が新たに設置されました。これは、京都市が不動産事業者を地域に身近な「まちの不動産屋さん」等を登録・公表しているものです(研修が必要)。
 条例のもう一つの大きな特徴は、京都市内の長年の課題である密集市街地の安全性向上に資するための取組も含まれていることです。全国的に課題となっている空き家対策。京都市では独自の取組と体制を構築しながら進められています。私たち都住研も、発足のきっかけは京都市内の細街路の安全性の向上、そして不動産流通事業の促進の必要性から。本条例の施行により、京都の住まい・まちづくりがますます活発になっていくことを期待しています。

まち再生・創造推進室の寺澤昌人さん(空き家対策課長)、文山達昭さん(密集市街地・細街路対策課長)にお話を伺いました。

寺澤昌人さん、文山達昭さん ■新しい体制で、どのような取組が新たに可能となったのか
 これまで、空き家の活用は住宅政策課,管理不全空き家対策や細街路対策は建築指導部、空き家条例の策定や密集市街地対策は都市づくり推進課、とそれぞれが担当していましたが、これからは当室がそれらの施策を一体的に進めます。また、個々の施策も、条例の施行に伴い、これまでよりも踏み込んだ取組が可能となっています。空き家の活用・流通を促進するための助成制度や密集市街地対策を進めるための「防災まちづくり推進事業」も間もなく開始しますので、京都のまちの再生のため、ぜひ積極的に活用していただければと思います。

■京都市故の課題、京都市故の強みについて
 京都の最大の強みはコミュニティ力。戦前からの密集市街地や建築が数多く残るという課題はありますが、古いものを大事にしながらこれらを改善して行くことに対する理解は得られているとパブリックコメントの際に実感しました。さらに、建築や不動産の専門家相互の連携も強みです。東日本大震災時に不動産事業者が京都市住宅供給公社と連携して避難住戸を確保したのもその基盤があってこそです。空き家問題に関しても、町家の存在や活用需要の高さなど、他の自治体と異なった独自の背景をもっており、それも京都の強みであると考えています。

■京都の不動産事業者に期待すること
 現在「地域の空き家相談員」として73人に登録いただいています。地域密着型の事業者として、所有者や地域の方に寄り添って対応してもらえる体制が整いつつあります。今後も、身近な事業者として、地域の歴史や現状を踏まえた、まちづくりの文脈に沿った空き家・細街路の再生の提案を期待しています。

定例会ダイジェスト ●京都の住まい・まちづくり拝見!
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