都住研ニュース

第43号 ●定例会ダイジェスト

定例会では様々な講師を毎回お迎えして、各テーマの専門的なお話をお伺いしています。そしてグループごとにディスカッション・発表を行い、様々な専門性をコラボレーションする場にもなっています。
ここでは、これまでに開催した定例会のダイジェストをお伝えします。

■第48回(平成21年9月17日)

 京都市では、「環境モデル都市・京都」のシンボルプロジェクトの一つである「木の文化を大切にするまち・京都」の実現に向けて、伝統的な京町家の知恵と現代の技術を融合した「平成の京町家」の普及促進に取り組もうとしています。これに関連して、平成22年8月5日に「平成の京町家コンソーシアム」が設立されました。
 都住研では、これまで複数のメンバーが「平成の京町家」の理念に通じる先行モデルの開発を行ったり、「木の文化を大切にするまち・京都」市民会議に参加して「平成の京町家」の開発に従事してきましたが、都住研としても「平成の京町家コンソーシアム」に参画し、これを発展させようとしています。定例会では、パネルディスカッション形式で平成の京町家の主として流通の観点から可能性と展望、課題について意見交換を行いました。

パネルディスカッション 〜『平成の京町家』は住宅供給の新スタンダードになり得るか?
パネリスト:
   西澤  亨 氏(京都市都市計画局住宅室部長)
   西巻  優 氏(京山々木の家づくりの会 理事長)
   井上 誠二 氏(都住研運営委員/建都住宅販売(株) 代表取締役)
   西村 孝平 氏(都住研事務局長/(株)八瀬 代表取締役)
コーディネーター:高田 光雄 氏(京都大学大学院教授/都住研運営委員)

話題提供

話題提供

西澤

■平成の京町家とは
 「平成の京町家」の3つの視点は、生活文化の継承と発展として「住みごたえ」、循環型木造建築システムの再構築として「住み継ぐ」、そしていえとまちの関係性の再構築として「まちに住む」です。「平成の京町家」の基本となる空間コンセプトは、内と外、人と自然、家とまちを豊かにつなぎ、関係付ける中間領域を設けることにあります。この内と外を関係付ける空間のことを「環境調整空間」と呼んでおり、これこそが「平成の京町家」を特徴づけるものです。
 内と外を高気密・高断熱で区切るのが一般的な省エネ住宅ですが、平成の京町家では内と外を繋ぐ環境調整空間を設けます。これは町家の知恵に学ぶことです。

■平成の京町家認定基準

 認定の対象は、新築の木造住宅です。一般型の「平成の京町家」については長期優良住宅制度による税の優遇措置や国土交通省の「木のいえ整備促進事業(長期優良住宅普及促進事業)」の建設費補助が利用可能です。
 認定基準には市内産の木材を使うこととなっていますが、まだ価格も流通も不完全な状態ですが、できるだけ活用するようにしていただきたいと思っています。

■平成の京町家の推進方策

 推進方策としては市民、関係事業者・団体、学識経験者等の幅広い市民力を集結し、「平成の京町家」コンソーシアム推進協議会を設立」しました。さらに「平成の京町家」の調査研究への支援を行い、設計、施工、手続が難しい伝統構法に対する支援(マニュアル整備、手続の簡素化等)を講じ、「平成の京町家」のモデル住宅展示場の開設に向けた取組を進めます。併せて「平成の京町家」の建設に対する各種優遇措置の整備に向けた検討」、「平成の京町家」の普及促進のための各種広報活動、マニュアル整備、「平成の京町家」の認定及び普及啓発を推進することとしています。

西巻

■平成の新町家の取組
 「京山々 木の家づくりの会」では国交省の補助金を受けてモデルハウスを作りました。多くの人に支持されるように、現代風な住まいになるように工夫を凝らし、様々な木材を使い、これらを樹種別のサンプル的に見られるようにしています。私たちはこのモデルハウスを活用し、「平成の新町家」と名乗ってキャンペーンを張り、年間20棟ほどやって参りましたが、この活動を通して、そのお客様は私たちが提供するものとはやや異なるものを求めていることがわかりました。
 それを示す事例が、こちらです。間口2間半の敷地で、施主は34歳と33歳の夫婦、改修ではなく新築で建てたものです。ご覧いただいたように、完全に京町家です。実際には、私たちがモデルハウスで示したようなものではなく、こういったものが求められていることがわかりました。玄関は檜の框で、土間は施主と職人が入り交じってみんなで仕上げていきました。四畳半の和室を玄関に作っています。そして「よそから来られた方のやりとりは、全てここで終わらせて、奥には入れない」と、何とも京都の生活文化に根ざした言葉を言われるようになりました。この家は、若い夫婦が住まいとは何かということを理解しようとしながら一生懸命取り組んだ事例です。
 施主は玄関のたたきだけでなく、紅殻塗り、漆喰塗りについても一緒に作業し、「半DIY」として仕上げていきました。寝室には唐長の和紙を使っています。大変高価なものです。これを「自分たちだけで見るんです。それが自慢です」と言われています。
 施主は、家づくりの過程全てをブログで発信してこられました。現在はこれを冊子にしようとしていますが、これを見ると30代の人の家づくりの傾向、嗜好を知ることができます。つまり、自分で考えて、自分たちでやりたい、というものです。

井上

 私は日頃から、地域の活性化のためには地域の事業者が活性化しなければならないと考えています。そこで私どもは、京都の活性化に寄与するために、京都らしい住まいを作るチャレンジを重ねてきています。
 これは、今から10年ほど前に建てた住宅で、内部空間は全て木材を使用しています。これは8年前の事例ですが「古民家調のものをやろう」として、むしこ窓風のものをつけました。しかしなかなか売れませんでした。これは6年前の事例ですが、大黒町の石畳の美しい町並みのところで日本家屋を意識して建てました。
 これは4年前になりますが、都住研とともに取り組んだ「京都まちなかこだわり住宅」です。まちなかの住宅のあり方をコンペを導入して実施、全国から81件もの論文が寄せられ、論文審査に通った5組の建築家とイベントを重ねながら、選ばれた1組の提案を実際に建築したものです。地域産材をふんだんに使い、京都の伝統工芸の技も沢山取り入れた住宅です。1年間モデルハウスとして公開しましたが、千人を超える人にご覧いただきました。あらゆる所にこだわった住宅ですので、費用もかかりました。
 現在取り組んでいるプロジェクトは、岩倉に「次世代型省エネ住宅」を大阪ガスと一緒にやっています。人に優しく、家に優しく快適な暮らしができるように、断熱性能の向上、太陽光発電を導入し、CO2の排出を50%以下に抑えています。これは現在公開中ですので、是非ご覧ください。
 こちらは、現在着手し始めたプロジェクトです。岩倉に23区画の住宅を供給するのですが、ここは風致地区ですので、隣地とは1.5mずつ離し、合計3mの空地ができます。これを活かして景観や環境に配慮したものにしようと思っています。将来的にはこれらの木々が育ち、雑木林になるようにしたいと思っています。将来的には里山が登場することになるかもしれません。

西村

 私どもは現在は改修をメインにしておりますので、新築からのアプローチは弱いですが、今回は平成の京町家を普及させる、という観点からお話ししたいと思います。

 現在は京町家自体が年間2%ずつ、約960戸ずつ解体されている現実があります。ですから、解体を少なくすることが平成の京町家を普及するアイデアに繋がると考えます。提案の1つが、石畳です。これは中京区西ノ京の14件の町家が並んでいるところです。その中の7軒を私どもが購入しました。さらに改修だけでなく石畳を整備しました。ご覧いただいた通り、とても美しい町並みとなりました。この経験から感じているのは、町並みを綺麗にしようと思ったら、住宅だけではなく足元も綺麗にするととても効果が高いことがわかりました。
 これは北区紫野下柏野町の物件です。ここは京都市内で最も町家が集積する町並みではないかと思います。町家が残る町並みでも、多くが連続性が壊れていますが、ここは面として残っています。ここの1軒を改修しましたが、購入者はこの町並みに惚れて購入されました。町並みの美しさが住宅の付加価値を上げたと感じています。
 平成の京町家が建てられていくためには何が必要でしょうか。平成の京町家に望まれる内容としては、「コストは建売住宅と同じ」こと、そして「京都の材を使う」こと、「本物志向」であること、「オリジナリティ」、そして「手入れによる愛着」あるいは「手造り住宅」が望まれると考えます。

質疑・意見交換

質疑・意見交換 高田 ありがとうございました。西村さんからは、家だけでなく町並みの重要性のご指摘を含めて、平成の京町家に求められる条件の提案をいただきました。

フロア 改修した方が良いストックが残されていくのに、それが壊されて新築されるのはその方がコストがかかるから。だから壊してしまう人が多い。それがコストを変わらずにできるのであれば、抜本的な解決になり、可能性が広がるのではないか。「建て売り住宅と変わらない程度の価格」というのは可能なのかどうか。

井上 今回紹介した改修の事例は、建て売りよりもコストは少し高くなる。しかしそこに価値を見いだす人が増えれば、供給量は増えるし、そうなればコストも若干下がってくると思う。あと、工業製品に慣れている人では、ちょっとした木の反りや傷もクレームに繋がる。「木や自然材とはそういうものだ」という理解が進むことも必要。

西村 断熱性能や耐震性など新築と同様のスペックを要求されると厳しい。そのスペックを要求してコストを安くするのは難しい。高い物件は手がつけられないので、スペックの要求をしないでコストをかけないものを作っていく必要もある。

西巻 新築で工業製品を活用する住まいと、無垢の住宅を欲しい人の間にはちょっとしたギャップがある。コストについては消費者の要求に応じた手法を持つべきだと思う。材木については山との連携があるので、ニーズに応えられる状態ではないのが事実なので、まずは山も交えてきちんとコミュニケーションを重ねていくことが大事。

西澤 山とまちを繋ぐ仕組みは必要。平成の京町家ではコンソーシアムに京都木材協同組合にも参加いただいているが、これから具体的な課題を共有しながら必要なことをやっていきたいと思っている。材木でいうと、京都の山には檜は良い材料があると聞いている。しかし杉はそれほどではなく、課題がある。1軒の家を建てるのに必要な材木は20Gだが、Gあたりの単価は5万円弱。価格にすると100万円。仮に地域産材が2割のコストアップだとすると、材料の価格そのものは建設費の総費用から見るとさほど大きくないのではないか。

高田 西巻さんから団塊ジュニア世代の消費行動が大きな意味を持ち始めていることがわかる。各社の商品に反応しているのは30代半ばの人たちであり、この層の需要をすくい取らないと、平成の京町家は拡大しないのではないか。

井上 現在課題と感じているのは、職人の確保。段々と質の高い施工ができる大工が減っている。また、山には協力的な人もいるが、全体を眺めるとどうも諦めモードが漂っているように感じる。普及させていくには、職人の登録制度も必要ではないかと感じる。

西村 私の所には、新築が建てられないような人が来ていると感じている。年収がいくらで、ローンがいくら組むかということを考えると、決め手になるのは手持ち資金。この額によって住宅にかけられる費用が決まってくる。建て売りに飽き飽きしている人が出てきている中、新築には手が届かないが、中古物件なら買える、という人がうちに来ていると思う。そしてそのような人は、6/1000の傾きも文句を言わない。

質疑・意見交換2 西澤 昨年6月にスタートした長期優良住宅は、年間500戸ペースで認定申請が出されており、ハウスメーカーが6割、一般の工務店が4割の比率。長期優良住宅の申請書に建設費を掲載する欄があるが、それを見ると坪単価はハウスメーカーが60万から80万円、一般の工務店では40万から60万円となっている。伝統工法については高くつくというイメージがあるが、現在、御所東で国の補助を受けて実験住宅が建設中での物件は坪80万円と聞いている。これはハウスメーカーの坪単価と同程度。
 井上さんが指摘された職人の問題については、どれだけ技を持った職人がいるかについて登録制度が必要と考えている。9月からは伝統工法の補助も受け付けているが、問い合わせは数件来ている。その際に「どこに頼んだらいいのか」という問い合わせもある。しかし行政から個別に紹介することができないので、登録制度を整備し、それを運用する仕組みが必要と考えている。

第17期総会を開催しました ●京都の住まい・まちづくり拝見!

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