都住研ニュース

第72号 ●定例会ダイジェスト 1

 定例会では様々な講師を毎回お迎えして、各テーマの専門的なお話をお伺いしています。そしてグループごとにディスカッション・発表を行い、様々な専門性をコラボレーションする場にもなっています。
 ここでは、これまでに開催した定例会のダイジェストをお伝えします。

■第75回

日 時:2026年9月28日(金)18:30〜
場 所:京都市景観・まちづくりセンターWSR
参加者:37名

次世代と考えた! 未来の京都の不動産マーケット

パネリスト:小原亜紗子 氏(Roomie)
長澤直子 氏(株式会社ろっけん不動産)
小山由美 氏(株式会社すきま)
コーディネーター兼パネリスト:扇沢友樹 氏(株式会社めい)

開会挨拶:高田光雄 会長(都市居住推進研究会)
 今年は都住研が発足して33年、定例会も75回目となります。
 本日は『次世代と考える、これからの京都の暮らしと不動産』をテーマに、不動産ビジネスの最前線に立つ次世代プレイヤーの皆さんにお集まりいただきました。
 会場には新旧さまざまな世代、さらには海外からの参加者も広がっています。
 従来の枠組みにとらわれない新しい発想や情報を引き出し、旧世代の方々にも『今日は来てよかった』と感じていただけるような、未来志向の議論を期待しております」。

第一部 パネルディスカッション

ディスカッション:次世代プレイヤーが語る実践と価値観

扇沢友樹氏
扇沢友樹氏:エリアの次の20年、30年後を提示する不動産事業を展開
 第一部では、コーディネーターを務める株式会社めい代表の扇沢友樹氏の進行のもと、ゲスト3名による自己紹介と事業実践のプレゼンテーションから始まり、パネリストの取り組む不動産事業について、掘り下げられました。

『自分たちのやり方で「問い」を定義し、内省する』

扇沢友樹氏 「今回のテーマは、単に具体的な事業のヒントやバズワードを得ることではありません。そうした情報はAIで検索すれば出てくる時代です。大切なのは、実例を通して自分たちで『問い』を定義し、これからの仕事、暮らし、不動産について内省することです」。
 自身を「不動産脚本家」と称する扇沢氏は、元卸売市場の社員寮を若手作家の制作・住居空間を兼ねたホテルへ再生した「河岸ホテル」や、元かまぼこ工場を食品加工専用テナントへ改修した事例などを紹介。「建物の特徴やエリアのストーリーを読み解き、次の20年、30年の使い方を提示していく」と語りました。

『人と人、人とまちをつなぐ「すきま」の仕事』

 続いて、株式会社すきま代表の小山由美氏が発言。事業用物件やこだわりを持つ事業者・デザイナー・アーティストを中心に仲介を手掛ける実践を報告しました。
小山由美氏
小山由美氏:自分が楽しいと思える仕事かどうかがモチベーションになる

小山由美氏 「私の仕事は『仲介して鍵を渡して終わり』ではありません。自己表現や自己実現をしたい方の『やってみたい』という気持ちに寄り添い、変化の過程に関わり続けることが不動産の面白さです。だからこそ、ポータルサイトで探せるような一般的な居住用物件の仲介や土地の売買、建売などは追いません。
 受け継がれてきた空間を次の世代へつなぐこと、そして人と人、人とまちをつなぐ『きっかけ』を作ることこそが『すきま』の仕事だと思っています」

『クライアントに寄り添い、共に手を取り合う』

 Roomie株式会社代表の小原亜紗子氏は、輸入車営業や医療系キャリアアドバイザーを経て起業した経歴を持ち、東山区での空き家活用や私設図書館の運営など、地域密着型の取り組みを披露しました。

小原亜紗子氏 「当社が大切にしているのは『自分の利益よりクライアントの利益』『一緒に頑張ること』、そして『自分自身が楽しそうと思えるか』の3つです。
 古いお家を売りたくないという高齢オーナーからのゲストハウス化のご相談や、元ご実家を若手支援のシェアアトリエにする企画など、一人ひとりの最善に向き合ってきました。クライアントやご家族の『一番近い存在』として、寄り添いながら一緒に生活を導いていく存在でありたいです」 小原亜紗子氏
小原亜紗子氏:クライアントにとって一番近い存在として生活を導く存在に

『買い手を守り、つくり手を支える「買主支援」』

 株式会社ろっけん不動産の長澤直子氏は、一級建築士としてのキャリアを生かし、「買主支援」に特化した独自の仲介スタイルを説明しました。

長澤直子氏 「現在の不動産取引には『失敗したくない買主』『効率を求められ時間をかけにくい仲介会社』『取引に関われない設計者・施工者』という情報の空白が存在します。
 私は買主側に立ち、建築に必要な深掘りした情報調査を行い、紹介元の工務店や設計者に対しても重要事項説明を実施して情報を共有します。買主をしっかり守ることが、結果として質の高い家・まちづくりを行う建築士や工務店さんを支えることにつながります。
 たとえ所有権移転が終わっても、その後の何十年という生活に責任が持てるような仲介を目指しています」

テーマ討論:「効率」の先にある、本当に大切なもの

 プレゼンテーションを受け、扇沢氏から「効率や金額以外の部分で、それぞれが最も大切にしているものは何か」という問いが投げかけられました。
長澤直子氏
長澤直子氏:買主の立場に立ち、その後の暮らしにも責任を持てる仕事

小山氏 「私が一番大切にしているのは『自分がそれを好きで、楽しいと思えるかどうか』です。自分が推せる空間や人と関わり続けるモチベーションが根底にあります」

小原氏 「『仲間』ですね。何かをやろうとしたとき、一人で届く範囲には限界があります。子育て世帯も含めて、助け合ったり手伝ってくれたりする仲間やコミュニティの存在が不可欠です」

長澤氏 「ひと言で言えば『責任』です。私が仲介した家や土地で、お客様は何十年も暮らしていきます。引き渡しで業務が終わったとしても、その先続く暮らしに対して責任を持ち続けられる仕事をしたいと思っています」

扇沢氏 「中立性を保つために紹介料などの裏のお金を取らず、買主側からの報酬だけで誠実に向き合う長澤さんの姿勢や、好みや価値観を共有して一発命中(高い精度)でマッチングさせる小山さんのスタイル、家族のように寄り添う小原さんのアプローチ。お三方とも手法は違えど、目先の利益や効率性ではなく、長期的・無形的な『関係性の最大化』を軸に自分のポジショニングを確立されている点が非常に印象的です」

 市場が縮小し価値観が多様化する時代において、既存のモデルに依存せず、自らの価値観と誠実さをもって不動産の可能性を切り拓く次世代たちの姿が浮き彫りとなるディスカッションとなりました。

●次世代と考えた! 未来の京都の不動産マーケット ●定例会ダイジェスト 2
●PDF版

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