都住研ニュース

第65号 ●住まい・まちづくり拝見!

今回は、都住研ニュース本号で紹介した第70回定例会のテーマおよび会場である、京都市が初めて取り組んだ「京町家賃貸モデル事業」を紹介します。

京町家の流通を促進する新しいカタチ

〜京都市京町家賃貸モデル事業〜

 この取り組みは「京町家保全・継承推進計画」に基づき、京都市が所有者から京町家を15年の契約で借り上げ、民間事業者に転貸し、利活用を図って京町家の保全・継承に繋げることを目的としています。
 2020年秋に事業者が公募され、IzutsuRealty(株)が選定され、今回の事業に至りました。対象となった京町家は、中京区の壬生に位置し、阪急京都線「西院」駅から徒歩約5分。5年程度空き家となっていた一列三室型の京町家で、昭和初期に建てられたもの。
 事業の仕組みは、京都市が京町家所有者から固定資産税および都市計画税相当額で借上げ、それと同額で活用事業者に転貸。活用事業者は、京町家の活用に当たって必要となるリノベーションや維持管理等を行います(費用は活用事業者の負担)。
 IzutsuRealty は事業費のうち工事費用をクラウドファンディングを活用して広く募り、調達しました。2021年6月に工事が完了し、7月中旬にはテナントが事業を開始しています。
 定例会に出席された所有者の男性は「この町家をどうしようか考えていたが、妻が京都市が今回の事業をやっていると知り手を上げた。今回はこのようにたくさんの人が関わってくれたことに感謝しているし、このような吹き抜けの開放的な空間になって感激している」「所有者は、ほとんどの人が再生に関して素人なので、悩んでいる。京都市だったら、安心できると思った」とその動機を語られました。
 さらに「良いものにしてもらうことが所有者にとって一番の値打ち。従前の価値観では『通り庭を残したら賃借人付かない』と言われたが、必ずしもそうではないと思った」と、多くのチャレンジを含んだ今回の再生に満足されていました。
 既存住宅流通市場の環境整備にとどまらず、公的セクターがマスターリースとして参画した今回の取組。これまで市場に出てこなかった京町家が事業者による建物の健全化を経て、保全・継承に繋がることが期待されます。




2021年度も「住宅市場を活用した空き家対策モデル事業」に採択されました! ●定例会ダイジェスト
PDF版

トップ > 都住研ニュース > 65号