都住研ニュース

第59号 ●まちの活力を牽引する劇場づくりに向けて 〜クラウドファンディングを活用した展開

Theatre E9 Kyoto  かねてから、舞台芸術の文化の蓄積が厚い京都ですが、近年は小劇場の閉鎖が相次いでいます。2015年から2017年にかけて、5つの小劇場が閉鎖したそうです。若い人も利用できる低料金の劇場の減少は、これら劇場文化の担い手の減少が危惧されています。
 このような状況を受けて、「京都に100年続く小劇場を!」という声とともに、有志により一般社団法人アートシード京都が結成され、劇場の候補地を京都駅東南部の東九条南河原町にある(株)八清所有の倉庫を対象として「Theatre E9 Kyoto」を創設するプロジェクトが2017年初夏に立ち上がりました。
 建物を貸借し、安全性の確保や周辺環境への配慮した建物とするためのリノベーション工事を行い、100席サイズの劇場、10mの高さのあるホワイエ、50平米のホワイトキューブ、アーティストがゆっくりとくつろげるスペースなどの整備が予定されています。
 これらの運用を通じて、そこで滞在しながら作品をじっくりと作り込める創造性あふれる施設を目指しておられます。このプロジェクトが始まった頃から、関係者は地域のお祭りやイベントにも積極的に参加し、またアーティストを招聘した活動を重ねて、文化・芸術にかかる交流を重ねておられます。
 プロジェクトに要する費用は、市民の力を結集して実現させようと寄付を募っています。3期に分けて募集し、ステップ1ではクラウドファンディングを採用し、許可申請や事前調査、設計にかかる費用を、ステップ2では改修工事の着工時に必要な費用、ステップ3では再度クラウドファンディングを採用し、工事費の残額と備品購入費用、とプロセスごとに分けて公募されました。
 今年秋には第1期が終了し、クラウドファンディングの結果、616人の方から合計1928万2000円の支援が集まったそうです。現在、ステップ2に向けた準備が進められています。
 折しも、このエリアは京都市が2017年3月に「京都駅東南部エリア活性化方針」をだしており、今年11月からアート・トライアルと称してまちの暮らしと芸術の接点を住民はじめ多様な主体と見つける試みが展開されています。文化芸術を基軸に、高い利便性やこれまでのまちづくりの蓄積を継承する将来像を描き、これに向けた取組が着手されました。
 多文化共生の取組の実績があるこの地域で、まちとともにある劇場を創り上げるプロセスを通して、幅広い支援を担い手を集めながら多様な価値観が共存するまちづくりの模索が始まっています。
※プロジェクトの詳細は、https://askyoto.or.jp/e9/ をご覧ください(写真と図はサイトから引用)。

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