都住研ニュース

第49号 ●京都の住まい・まちづくり拝見!

ここでは、京都の住まい・まちづくりに関するユニークな、新しい取り組みを紹介します。

〜京町家を承継するための事業の模索 〜不動産管理信託の試み

 京都の住文化を今に伝える京町家。しかし、それを後世に住み継いで行くには様々な課題があります。その結果、活用や承継の意思があっても解体される町家が少なくありません。このような状況を鑑み、一般社団法人京都府不動産コンサルティング協会では、不動産管理信託を活用した京町家再生・利活用事業を展開しています。
 この事業では、町家所有者の資金負担を軽減しながら老朽化した町家を改修し、賃貸物件として活用していくものです。事業の第一弾は、京都市北区紫野の織屋建の町家で適用されました(2010年〜)。
 事業期間は10年間に設定され、所有者から不動産信託会社(きりう不動産信託)に信託、フラットエージェンシーにマスターリースされ、同社の設計・施工で賃貸住宅として供されました。信託会社より10年分の賃貸料が所有者に一括払いされ、所有者の自己負担とともに改修費用に充てられました。
 この手法では、所有者の金銭的な負担無く町家の改修が可能となり、またプロの参画により賃貸住宅としての経営が可能となります。また信託期間の終了時には物件は所有者の所有に戻ることになります。空家となっているストックの質の向上とともに事業活用が可能となります。さらに所有権を一旦移すことで、相続に関する権利の整理などの猶予期間ができることとなり、相続によるトラブルを未然に防ぐ対策を練ることが可能となります。
 町家の承継のためには、「町家を残したい」という意思や維持管理・改修費用が必要なのはいうまでもありませんが、その意思が実施されるには、相続の際の権利の整理も大事です。不動産管理信託の活用は、所有者の「バトンタッチ」の際に備えた手法としても、注目されています。

改装前
改装前
改装後
改装後
室内
漆喰など自然材を使って改修された内部

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