都住研ニュース
第29号 ●「京都まちなかこだわり住宅」経過報告
都住研と(財)京都市景観・まちづくりセンターの共催で実施して参りました「京都まちなかこだわり住宅」設計コンペの全経過を報告いたします。
■コンペの趣旨
●京都の住まい・まちづくりの状況
京都は歴史文化都市として、数多くの世界に誇る歴史的文化遺産を擁している。
しかしその反面、1200年にわたる都市であるが故に細い道路、それに面する狭小間口の住戸、高密の木造市街地、複雑な権利関係、といった住まい・まちづくりに関する難しい課題を抱えている都市でもある。
一方、近年多くのメディアにも注目されるようになってきている「京町家」は、京都の住文化を具現するものと言える。しかし、地域経済の衰退や住宅産業の変化、少子高齢化など京町家をとりまく社会的状況が変化し、さらに建物の老朽化やライフスタイルの変化に対応しきれないなどの個別事情も加わって、京町家が形成する京都のまちなみも維持しきれない状況になってきている。
このように、京都の住まい・まちづくりは、先人が築いてきた住文化を継承するには、社会・経済的に様々な課題を抱えているといえる。
●本コンペのめざすもの
○京都の住まいを京都の材料・職人でつくり、供給することで、京都の地場産業の振興、担い手の育成等、意識 的に地域の産業連関を築き、そしてそこから良質な都心部のまちづくりにつながることを目指す。
○建築家の参画を得ながら関係者が協働関係を構築するとともに、これらの仕組みづくりに取り組み、具体的な住まい像の構築を行う。○実際にモデルハウスを建設することで、情報発信とパブリシティを行う。
※「平成17年度全国都市再生モデル調査」採択
■審査委員等
【審査員長】
巽 和夫(京都大学名誉教授、都市居住推進研究会会長)
【審査員】
高田光雄(京都大学大学院教授/都市居住推進研究会運営委員)
吉村篤一(建築家/建築環境研究所代表)
井上誠二(建都住宅販売代表取締役/都市居住推進研究会運営委員)
西村孝平((株)八清代表取締役/都市居住推進研究会運営委員)
奥 美里((財)京都市景観・まちづくりセンター事務局次長)
【運営委員】
安枝英俊(京都大学大学院 助手)
所 千夏(アトリエCK)
荒木公樹(空間計画)
大島祥子(都市居住推進研究会)
谷口一朗((財)京都市景観・まちづくりセンター)
森川宏剛((財)京都市景観・まちづくりセンター)
■提案の募集
(1)京都まちなかこだわり住宅のコンセプトプロポーザル
(まちなかでの建替需要に応える)
『様々な事情によりおこる京都都心部での住宅更新において、ふさわしい住まいのコンセプト』提案
【設 問】
1)少子高齢化時代における、京都のまちなかに住まうライフスタイルとそれを踏まえたまちなか住居の計画とデザインのあり方について
2)駐車場・中庭等の屋外的空間のあり方を含め、これからの京都のまちなかの景観形成に配慮した住居のあり方について
3)京都産材や伝統的技術を活用するなどにより、地域経済面及び環境面での循環型社会の構築に貢献するまちなか住居のあり方について
(2)これからの京都まちなかこだわり住宅の提案
(建売住宅の新規供給、モデルハウス化を前提とする)
【募集内容】
『京都のまちなかにおける、土地利用計画とまちなみ計画、住戸計画』の提案
〜地域内の産業連関により京都の産業・文化が持続的に発展できることを視野に入れた新しい京都まちなか住居デザイン提案を募集。
■プロポーザルの受付北海道から九州まで、全国から81の提案をいただきました。 |
■プロポーザルの審査匿名にて、審査委員の採点により審査を行いました。 |
■5組の入賞提案の選出(敬称略)○魚谷 繁礼 他2名 (現代京都都市型居住研究会/京都市)○大野 鶴夫 他3名 (一級建築士事務所大野アトリエ/大阪市) ○北澤 嘉浩 他3名 ((有)ウィズ・アンド・パートナース/大阪市) ○野原 卓 (東京大学/東京都) ○松尾 大地 他1名 (松尾(株)松尾大地建築事務所/京都市) |
■説明会+学習会の開催(2月16日(木)18:30〜)入賞した組の設計提案者を迎え、本コンペの趣旨説明を実施。後半では伝統産業に関わる講師を交え、学習会を開催しました。 |
■ワークショップの開催(2月22日(水)18:30〜)設計提案者からプロポーザルの内容を発表いただき、その提案を共有。その後、粟田学区、本能学区、明倫学区の方達を交え、まちづくりを視野に入れた意見交換を展開しました。 |
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■敷地条件等○所在地:京都市東山区三条通北裏白川筋西入 石泉院町404番地の2(粟田学区) |
■入賞した、他の設計提案者の皆さんの提案(敬称略)
5組の入賞されたの皆さんの提案は、いずれも力作で、それぞれ個性的な提案がされました。
審査は最後まで分からない状況でしたが、最終的に、フレキシブルな間取り構成とモダンな外観を有する魚谷氏の提案が審査員の支持を集めました。
●野原 卓 案
●北澤 嘉浩 案
●松尾 大地 案
●大野 鶴夫 案
■今後の進め方について
○コンペ終了後は、記録を含めた報告書を作成します。
○優秀賞の設計提案者と、モデル住宅建設の事業主である、建都住宅販売(株)との協議・調整により進めます。
○コンペ終了後、速やかに作業を開始、夏前に着工、秋の完成を目指します(予定)。
○モデルハウス建設のプロセスおいて、適宜記録を作成し、今後の情報発信の拠点とします。
○モデルハウス完成後は、都市居住推進研究会及び(財)京都市景観・まちづくりセンターも加わり、情報発信やパブリシティの拠点として活用します。
どうぞ今後の取り組みにもご注目ください!