都心部の路地における子育て支援空間としての検証とテーマ型再生事業手法の構築

平成31年度「地域の空き家・空き地等の利活用等に関するモデル事業」

事業の計画

1. 事業の概要

 京都市内には数多くの路地がある。その多くは建築基準法上既存不適格であり、接道の規定から建物の更新や大規模修繕が進まず老朽化が進み、災害や火災への脆弱性が指摘されている。
 そしてまた、修繕や建替えなどが進ます現代の生活への適応が困難であること、売りたくても売れず、空き家化が進む悪循環も見られる。
 一方、路地内には歴史的な景観、集住生活の知恵やコミュニティが継承されており、現代そして未来のまちづくりでの様々なヒントがある。
 とりわけ近年、都心部で地価が高騰し続ける中、路地は利便性が高いにもかかわらず地価の高騰が抑えられており、多様な世代・世帯の住まう場所としての期待が高まっている。

 そうした中、昨年度は、路地が子育て世帯のアフォーダブル住宅として適しているのではないかという問題意識のもと、2箇所の典型的な路地において、@街区内区画の更新と賃貸住宅の供給、A歴史的な景観を継承するための費用捻出を前提とした活用策の検討を行い、シミュレーションと課題の整理を行った。
 今年度は、その際に障壁となった所有者所在不明地等の対処方法について、空き家・空き地問題の根源と捉え、これを行政と民間の連携によりまちづくりに資する土地利用を検討するスキーム(仮称「京都型特定目的土地利用円滑化スキーム」と呼ぶ)を構築し、実際の事業に繋げる基盤を整える。

2. 現状の課題

■路地奥の空き家・空き地の利活用が困難
  • ・建築基準法の接道の規定から大規模修繕や建物の更新、土地利用の変更などが現状では不可能である。それを特定目的(公益性や政策との親和性。今回は「子育て世帯支援」を想定)に資するものであれば事業化が可能なモデルを構築する。
  • ・いわゆる“スポンジ化”が進む路地内の空き家・空き地について、区画の集約などを通じて、建物や土地利用の更新を可能にする。
  • ・民間市場で流通性が低い不動産(負動産と近年は呼ばれる)について、行政と民間事業者の連携を通じて利活用を可能にし、価値を創り、適度な市場性を持たせることが期待できる。
■子育て世帯のアフォーダブル住宅の不足
  • ・近年、京都市内都心部では、地価の高騰やマンション供給の減少により、子育て世帯が選択できる住宅の減少が課題となっている。路地に面した物件は地代が比較的リーズナブルなこともあり、これらの世帯に対するアフォーダブル住宅を供給することができる。
  • ・現在では行政や民間事業者、NPO法人等多様な主体により、子育て支援に関するサービスが充実してきている。これらの活動をさらに支援するために、活動の拠点を提供することができる。

2. 事業の内容・特徴

■事業の特徴
  • ・京都市には多数の路地が存在しており、また路地内の空き家・空き地も多数存在する。不動産としての価値が高くなく、放置されたままのものも少なくない。
  • ・一方、地価の上昇とともに若年層世帯の住まいを見つけることが困難であり、市外への流出が行政課題としても指摘されている。
  • ・路地の中に若年層世帯の住まい等を供給するモデルを構築することは、これら2つの課題に対しての解を導くことに繋がることが期待できる。
  • ・事業のシミュレーションやモデルの構築に留まらず、実際に体制を立ちあげ、事業に着手できるレベルまで精度を高めるとともに、行政、民間事業者、市民団体等の役割を明確にするとともに、多様な参入者(不動産事業者、サービス提供者・利用者、住民、行政等)が得られる可能性を高めることができる。
■事業の内容
@路地内の空き地・空き家の収用や寄贈を通じて土地の集約や事業可能な土地としていく流れの検討
  • ・空き家・空き地問題の根源でもある所有者所在不明地等の対処策として、公益(今回は「子育て支援」を採用する)に資する事業目的を前提とした寄贈や収用等も含めた土地取得を検討する。
  • ・公正に事業を展開するための要件等の整理を行う。
    流れ
A「仮称「京都型特定目的土地利用円滑化スキーム」構築に向け、行政・中間支援組織・民間が連携した事業スキームの構築と体制の整備
  • ・子育て支援を含めた地域のまちづくりに資する事業を展開するための体制を検討する。
  • ・ランドバンク制度等を参考にしながらスキームを構築する。
  • ・公正に事業を展開するための要件等の整理を行う。
    流れ
B京区の路地(中堂寺前田町)における事業の検討〈継続〉
    流れ
  • ・上記の検討を踏まえ、継続して対象路地における事業検討を進める。(約20年前に路地奥の火災が発生し、再建ができずに空地のまま放置されている。空地により街区にある2本の路地が空間的に繋がっている。街区を対象にしたテーマ型の更新プランを検討する)
Cその他の路地を対象に、個別解でない路地再生策を検討する〈新規〉

  上記対象に加え、様々な路地再生のパターンを検証する。対象路地は行政及び事業者から候補を持ち寄り複数の路地を対象とする。

■定量的な成果目標
  • ・中堂寺前田町の街区内において、従前7区画の敷地を再編し、通路環境を整えた上で5区画の長屋新築の計画を立てている。この実現化に向けて調整を進める。
  • ・昨年は「路地奥物件所有者」及び「子育て家族」を対象としたパンフレットを作成した。今年は、より多様な不動産事業者や建築士、サービス提供者等を対象にした事業普及パンフレットを作成する1,000部程度。
  • ・上記の資料が調い次第、事業者等を対象としたセミナーを開催する(2回程度)。
■本年度に達成する目標・成果と次年度以降の展開
〈本年度の目標〉

  本年度(2020年1月末まで)に下記@Aの取り組みを完了させる。Bについては所在不明所有者の追跡にも左右されるが、可能な限り計画している事業を進める。

  • @路地内の空き地・空き家の寄贈や収用等も含めた土地取得により集約や事業可能な土地としていく流れの検討
  • A「仮称「京都型特定目的土地利用円滑化スキーム」構築に向け、行政・中間支援組織・民間が連携した事業スキームの構築と体制の整備
  • B下京区の路地(中堂寺前田町)における事業の検討〈継続〉
  • C事業者等を対象としたセミナーの開催
〈次年度以降の展開〉
  • @「仮称「京都型特定目的土地利用円滑化スキーム」の立ちあげ
  • A下京区の路地(中堂寺前田町)での事業の実施
    • ・当面は所有者不在地の対応に向けた手続きの着手
    • ・事業プランの精査と事業主、事業資金等の調整

4. 事業の実施体制(役割分担)

事業の実施体制

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